2019年 03月 20日
ナチス第三の男 ~ 討たれる者と討つ者と |
ナチスドイツのラインハルト・ハイドリヒと、彼の暗殺を実行した青年たちを描いた作品。
ヒトラー、ヒムラーに次ぐ第三の男と呼ばれた冷酷無比な男、ハイドリヒ・・・
そんな彼を倒さねばと、秘かに計画を進めるレジスタンスとそれに属する青年たち・・・
それぞれに交錯する運命を2部構成でサスペンスたっぷりに迫ります。
その冷酷さから“金髪の野獣”と呼ばれたラインハルト・ハイドリヒ。
優秀な海軍兵士だったのに、女にだらしなく不名誉除隊となり、婚約者の勧めでナチスドイツに入党するやその鬱憤を晴らすかのようになりふり構わぬ所業で頭角を現し、誰もが尻込みしたユダヤ人虐殺を主導、絶大な権力を手に入れチェコの統治に乗り出します。
一方、それに危機感を抱いた英国とチェコスロバキア亡命政府の命令で、2人の青年がチェコ国内に潜入し、ハイドリヒの暗殺計画を実行しようと暗躍します。
ハイドリッヒがナチスで成り上がって行く前半と・・・
それに歯止めをかけようとするチェコのレジスタンス、ヤンとヨゼフに焦点が移る後半・・・
物語がふたつの視点に大きく分かれる構成になっています。
ところがこれが何だか中途半端・・・
結局、唯一のナチス高官ハイドリッヒの暗殺の一部始終が、ただニュース映像のようになぞられただけの印象です。
ハイドリッヒという男は、傷つけられたプライドとそれに伴う名誉欲に駆られ、ユダヤ人虐殺に突き進んでいきます。
そこには単なる冷血漢というだけではなく、どこか屈折した心情を感じさせました。
その人間性の暗い闇の部分がとても気になりました。
そこを掘り下げればもっと深みのある作品になったかも、と考えるとちょっと残念な気がします。
個人的にはそれをしっかり見たかったと思います。
一方、レジスタンスのヤンとヨゼフにも家族や恋人とのいきさつがあり、それは少し描かれはするものの、そこはやはり通りいっぺんな感じがしました。
ふたつの話に分けてしまったので、結局宙ぶらりんな仕掛けにならざるを得ず、欲求不満の残る後味になってしまったと感じます。
暗殺には成功したものの、それによりナチスの報復は過酷を極めます。
罪なき市民への拷問や殺戮をこれでもかとばかりリアルに見せつけられ、こんなことが許されるのか?と暗澹たる気持ちになりました。
by anculu
| 2019-03-20 10:59
| シネマハウス
|
Comments(0)