2017年 04月 11日
The Net 網に囚われた男 ~ からめとられた魚捕り |
韓国の鬼才キム・ギドク監督作品・・・
ふとした事故で北朝鮮から韓国に迷い込みスパイ容疑を掛けられた男が、南北双方の国家に翻弄される悲劇を描きます。
北朝鮮の貧しい漁師。
南北境界線付近で漁をする彼はいつものようにボートを出しますが、エンジンに網が絡まり故障。
そのまま境界線を越えて韓国側に流され、不法入国してしまうことに。
妻と幼い娘を残し心ならずも脱北者となった主人公。
北朝鮮への帰還を懇願し続けますが、韓国警察に連行されたうえ、北憎しの鬼のような公安官にスパイ容疑で激しく尋問され、その上司からは南への亡命を執拗に迫られます。
しかしマスコミに気づかれてコトが大きくなり、上層部はやむなく彼を北に返すと決定。
からくも北朝鮮の家族のもとに帰ることができたのですが・・・
政治的な不条理劇を息づまるサスペンス・ドラマに仕上げた、ギドク監督会心の作品です。
筋立てもわかりやすく、最後まで飽きさせず、最近の彼の作品には珍しい娯楽作に仕上っています。
韓国警察は未来のない北の独裁国家から罪のない人々を救出しなければならない、という人道主義を力説します。
しかし実のところそれは、独裁国家の北より自由主義の南の方が優位だという思い上がった独断と偏見、そして根深い北への憎悪であることが次第に姿を現します。
その最たるものが、この漁師を歓楽街に無理矢理連れ出し、自由主義国家の繁栄を見させて亡命を促そうとするところです。
ところが、見てはならないとそれまでかたくなに閉じていた眼で彼が見たものとは・・・
うらぶれた路地裏を下着姿で逃げまどう、金にしばられた娼婦の姿でした。
自由主義国家の標榜する自由とは、こんなにもみじめで不公平なものか?・・・
それは北へ帰りたいと願う彼の想いをさらに強固なものにしてしまうだけでした。
しかし、そんなにまで苦労して帰った北の故郷でこの漁師を待っていたのは・・・
韓国警察と何ら変わらない北朝鮮当局の独断と偏見、そして憎悪でした。
ギドク監督はどちらか一方を正当化することなく、国家システムとイデオロギーに押しつぶされる個人の尊厳を見つめます。
本来何よりも優先されるべき人間としての尊厳が、国家という得体の知れないものに、いとも簡単に踏みにじられることへの激しい怒りと悲しみを見る思いでした。
ふとした事故で北朝鮮から韓国に迷い込みスパイ容疑を掛けられた男が、南北双方の国家に翻弄される悲劇を描きます。
北朝鮮の貧しい漁師。
南北境界線付近で漁をする彼はいつものようにボートを出しますが、エンジンに網が絡まり故障。
そのまま境界線を越えて韓国側に流され、不法入国してしまうことに。
妻と幼い娘を残し心ならずも脱北者となった主人公。
北朝鮮への帰還を懇願し続けますが、韓国警察に連行されたうえ、北憎しの鬼のような公安官にスパイ容疑で激しく尋問され、その上司からは南への亡命を執拗に迫られます。
しかしマスコミに気づかれてコトが大きくなり、上層部はやむなく彼を北に返すと決定。
からくも北朝鮮の家族のもとに帰ることができたのですが・・・
政治的な不条理劇を息づまるサスペンス・ドラマに仕上げた、ギドク監督会心の作品です。
筋立てもわかりやすく、最後まで飽きさせず、最近の彼の作品には珍しい娯楽作に仕上っています。
韓国警察は未来のない北の独裁国家から罪のない人々を救出しなければならない、という人道主義を力説します。
しかし実のところそれは、独裁国家の北より自由主義の南の方が優位だという思い上がった独断と偏見、そして根深い北への憎悪であることが次第に姿を現します。
その最たるものが、この漁師を歓楽街に無理矢理連れ出し、自由主義国家の繁栄を見させて亡命を促そうとするところです。
ところが、見てはならないとそれまでかたくなに閉じていた眼で彼が見たものとは・・・
うらぶれた路地裏を下着姿で逃げまどう、金にしばられた娼婦の姿でした。
自由主義国家の標榜する自由とは、こんなにもみじめで不公平なものか?・・・
それは北へ帰りたいと願う彼の想いをさらに強固なものにしてしまうだけでした。
しかし、そんなにまで苦労して帰った北の故郷でこの漁師を待っていたのは・・・
韓国警察と何ら変わらない北朝鮮当局の独断と偏見、そして憎悪でした。
ギドク監督はどちらか一方を正当化することなく、国家システムとイデオロギーに押しつぶされる個人の尊厳を見つめます。
本来何よりも優先されるべき人間としての尊厳が、国家という得体の知れないものに、いとも簡単に踏みにじられることへの激しい怒りと悲しみを見る思いでした。
by anculu
| 2017-04-11 10:48
| シネマハウス
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