2013年 07月 24日
訣別 ゴールドマン・サックス |
グローバリズムや市場原理主義に席巻されるこの世界・・・
その反映としての、小さな政府、民営化、規制緩和、貿易自由化などの施策の数々・・・
それが中流階級層を破壊し、格差を広げ、多くの人々が貧困にあえぐ社会を出現させました。
この先、それを乗り越え、どうしたらお互いが助け合う公平な社会をめざすことが出来るのか?・・・
そんなことを自分のアタマとコトバで考えたくて、ここのところずっと、それに関連するような本を手当たりしだいに読んでいました。
理解するのにけっこう時間のかかったハイエクとケインズの経済政策の相違のような小難しいのやら、生々しい貧困の現状のルポなどさまざまでしたが、強欲資本主義の総本山ウォール街の内情を暴露したこの本は、その中でも特に面白かった一冊です。
著者のグレッグ・スミスは、南アフリカ出身のユダヤ人・・・
奨学金により名門スタンフォード大学を卒業、世界最高の投資銀行ゴールドマン・サックスに入社した秀才中の秀才です。
ところが彼は、この名門投資銀行の組織文化が極度の金もうけ主義に陥り、顧客の利益をまったく顧みなくなってしまったことに幻滅し、内部からそれを告発・・・
その内容に、全米が騒然となりました。
前半は、まだ初々しい著者が、ライバルたちとの競争を乗り越え、先輩たちからシゴかれながらも愛され成長していく日々が、素直でユーモアたっぷりに語られて、まるで青春小説を読むようなさわやかさを感じました。
しかしその一方で、たった一度でも失敗すればたちまち出世街道から外されてしまう過酷なサバイバル、トップともなれば数十億円を下らない桁外れの年収の奪いあいなど、1%の勝ち組のすさまじい実態も浮かび上がってきます。
その名門投資銀行も、同時多発テロ、世界金融危機、欧州政府債務危機などを経験するうち変質し、次第に顧客などまったく顧みない金もうけ第一主義に堕落していきます。
著者は云います・・・ウォール街の金融機関は損をしない、と。
なぜなら、彼らは世界中のヘッジファンド、オープン型投資信託、年金基金、国富ファンド、一般企業の売買を扱っているワケだから、どこの誰が「売り」で誰が「買い」なのかをよく知っているからです。
まるで、カジノ側が客の手札を知りつくしているようなものです。
しかも、カジノに対する規制より、はるかに監視も記録も求められず、透明性は限りなく低い・・・
だから、彼らは規制緩和を叫び、規制に反対する政治的な活動にカネを投じるのです。
大多数の普通の人々が傷つき、ゲームに不正を仕掛ける方法を会得した超少数派だけが大金持ちになり、下手をすれば再び世界経済に破局をもたらしかねないというのが、ウォール街の実状です。
しかも、この金融界の非倫理的な行動に悪影響を受けるのは、つまりは市民であり、教職員であり、年金生活者であり、障害をもつ人たちなのです。
しかし、これほどの大問題なのに、政治にそれを解決しようとする意思は見られず、むしろ助長しようとしているのが現状です。
アベノミクスなど、その最たるものでしょう・・・
折りしも今回の参院選で、予想通り自民・公明の与党が圧勝・・・
それはつまり、これらの問題の是正は望むべくもなく、格差が今にも増して広がり、より多くの人がさらに悪影響を受ける社会になってしまうことを意味しています。
アンクルは、社会体制をあまり変えずに、なおかつこうした現状を打破するこれからの経済のあり方として、注目出来るのはムハマド・ユヌスが提唱している“ソーシャルビジネス”かなぁ?と、感じています。
ただ、今回の選挙結果は、そうした公平な社会に向かおうとはせず、それとはまったく逆の、強きが弱きを喰いつくすあさましい社会を望んだ、ということです。
その反映としての、小さな政府、民営化、規制緩和、貿易自由化などの施策の数々・・・
それが中流階級層を破壊し、格差を広げ、多くの人々が貧困にあえぐ社会を出現させました。
この先、それを乗り越え、どうしたらお互いが助け合う公平な社会をめざすことが出来るのか?・・・
そんなことを自分のアタマとコトバで考えたくて、ここのところずっと、それに関連するような本を手当たりしだいに読んでいました。
理解するのにけっこう時間のかかったハイエクとケインズの経済政策の相違のような小難しいのやら、生々しい貧困の現状のルポなどさまざまでしたが、強欲資本主義の総本山ウォール街の内情を暴露したこの本は、その中でも特に面白かった一冊です。
著者のグレッグ・スミスは、南アフリカ出身のユダヤ人・・・
奨学金により名門スタンフォード大学を卒業、世界最高の投資銀行ゴールドマン・サックスに入社した秀才中の秀才です。
ところが彼は、この名門投資銀行の組織文化が極度の金もうけ主義に陥り、顧客の利益をまったく顧みなくなってしまったことに幻滅し、内部からそれを告発・・・
その内容に、全米が騒然となりました。
前半は、まだ初々しい著者が、ライバルたちとの競争を乗り越え、先輩たちからシゴかれながらも愛され成長していく日々が、素直でユーモアたっぷりに語られて、まるで青春小説を読むようなさわやかさを感じました。
しかしその一方で、たった一度でも失敗すればたちまち出世街道から外されてしまう過酷なサバイバル、トップともなれば数十億円を下らない桁外れの年収の奪いあいなど、1%の勝ち組のすさまじい実態も浮かび上がってきます。
その名門投資銀行も、同時多発テロ、世界金融危機、欧州政府債務危機などを経験するうち変質し、次第に顧客などまったく顧みない金もうけ第一主義に堕落していきます。
著者は云います・・・ウォール街の金融機関は損をしない、と。
なぜなら、彼らは世界中のヘッジファンド、オープン型投資信託、年金基金、国富ファンド、一般企業の売買を扱っているワケだから、どこの誰が「売り」で誰が「買い」なのかをよく知っているからです。
まるで、カジノ側が客の手札を知りつくしているようなものです。
しかも、カジノに対する規制より、はるかに監視も記録も求められず、透明性は限りなく低い・・・
だから、彼らは規制緩和を叫び、規制に反対する政治的な活動にカネを投じるのです。
大多数の普通の人々が傷つき、ゲームに不正を仕掛ける方法を会得した超少数派だけが大金持ちになり、下手をすれば再び世界経済に破局をもたらしかねないというのが、ウォール街の実状です。
しかも、この金融界の非倫理的な行動に悪影響を受けるのは、つまりは市民であり、教職員であり、年金生活者であり、障害をもつ人たちなのです。
しかし、これほどの大問題なのに、政治にそれを解決しようとする意思は見られず、むしろ助長しようとしているのが現状です。
アベノミクスなど、その最たるものでしょう・・・
折りしも今回の参院選で、予想通り自民・公明の与党が圧勝・・・
それはつまり、これらの問題の是正は望むべくもなく、格差が今にも増して広がり、より多くの人がさらに悪影響を受ける社会になってしまうことを意味しています。
アンクルは、社会体制をあまり変えずに、なおかつこうした現状を打破するこれからの経済のあり方として、注目出来るのはムハマド・ユヌスが提唱している“ソーシャルビジネス”かなぁ?と、感じています。
ただ、今回の選挙結果は、そうした公平な社会に向かおうとはせず、それとはまったく逆の、強きが弱きを喰いつくすあさましい社会を望んだ、ということです。
by anculu
| 2013-07-24 06:31
| 本のはなし
|
Comments(2)
「民主主義は最悪の制度である、それ以外の制度を除いては」
という警句には大いに共感していますが、それにしても敗戦後
60余年、ABノミクスになだれをうつ、この国の民度にはほとほと
嫌気がさしています。
朝日新聞の3月のオピニオン欄で、今の日本の状況は、
「日本の国富を各国(特に米国)の超富裕層の個人資産へ
移し替えるプロセス」だと内田樹氏が述べています。
実に鋭い指摘ではあるのですが、さて、それでは我々は
どうすればいいのか?どうなるのか?
竹林で酒でも酌むか。
という警句には大いに共感していますが、それにしても敗戦後
60余年、ABノミクスになだれをうつ、この国の民度にはほとほと
嫌気がさしています。
朝日新聞の3月のオピニオン欄で、今の日本の状況は、
「日本の国富を各国(特に米国)の超富裕層の個人資産へ
移し替えるプロセス」だと内田樹氏が述べています。
実に鋭い指摘ではあるのですが、さて、それでは我々は
どうすればいいのか?どうなるのか?
竹林で酒でも酌むか。
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Commented
by
anculu at 2013-07-25 19:16
酔仙さん
内田氏の指摘はまさにその通りだと思います
郵政民営化も「ゆうちょ」の莫大なお金を投資市場にさらけ出し
アメリカの超富裕層がその恩恵にあずかろうとしたのが
本来の目的だったと云われています
この国は何時になったら、公平な成熟した社会を目指す国に
なろうとするのでしょうか?
このままだと破綻の道をまっしぐらだと思うのですが・・・
そういえば、易経の卦が占うこの国の今年は、崩れゆく「山地剥」・・・
ひょっとして実は、今が崩れている真っ最中なのかも知れませんね
内田氏の指摘はまさにその通りだと思います
郵政民営化も「ゆうちょ」の莫大なお金を投資市場にさらけ出し
アメリカの超富裕層がその恩恵にあずかろうとしたのが
本来の目的だったと云われています
この国は何時になったら、公平な成熟した社会を目指す国に
なろうとするのでしょうか?
このままだと破綻の道をまっしぐらだと思うのですが・・・
そういえば、易経の卦が占うこの国の今年は、崩れゆく「山地剥」・・・
ひょっとして実は、今が崩れている真っ最中なのかも知れませんね