2012年 11月 11日
希望の国~救いようのない未来 |
MOVIX京都で、すでに10月20日から公開中。
夕方からの1回上映のみになっていましたが、これは今、見ておかねばならない映画だと思い、何とか都合をつけて駆けつけました。
監督は、『愛のむきだし』『ヒミズ』の鬼才、園子温。
庭先に警戒区域が設定されてしまった、隣り合わせのふた組の家族。
その姿を通して、大地震と大津波に見舞われ、それによる原発事故に翻弄され、放射能という見えない恐怖に分断されて、変化していく人々のその後が、鋭く描き出されます。
東日本大震災後の20XX年、新たに大震災に見舞われた架空の長島県という設定になっていますが、福島そのもののリアルな描写が続きます。
監督は被災地に入り込んで、現地の人々の話を丹念に聞き、その都度シナリオを書き換え、その生々しい声をセリフに反映させたといいます。
ある日突然、それまでの生活環境もそのありようもすべて奪われ、変えられてしまった人々…
電力会社や政府やマスコミや社会などを非難するセリフは、たくさん出てきます。
腹立たしく、悲しく、怒りに満ちたエピソードも数多く語られます。
しかしそうであっても、どこかを、また何かを批判したり、激しく非難したり、告発したりするような姿勢は、あまり感じさせません。
すべては淡々と、まるで風が吹き過ぎるかのようにスクリーンを流れていきます。
そこにあるのは、怒りや慟哭などではなく、冷めきったあきらめと深く静かな悲しみだけ…
まるでドキュメンタリーを見るかのようなのに、何かが違うのは、ここには“感情”が渦巻いているからです。
タイトルに反して、この映画から浮かび上がってくるのは、救いようのない<絶望>です。
『復興』、『がんばろう日本』、『絆』…
そんなコトバがなんと空しく響くことか…
そのむなしさだけが宙を舞っているようです。
ずっと、そんなことに気付かず、いや気付かないように仕組まれて、ここまで来たけれど、この国はこんな国だったんだ。
そして、こんなことになってもまだ、ちょっとやそっとでは変われない、変えることもできない、そして変わろうともしない、どうしようもない国なんだ。
この国には、もう何ひとつ望めない、希望なんてない国なんだ…
しかし、それでも、ここで、生き続けなければならない…
ここに住む以上、自らを鼓舞してでも、“一歩一歩”“前へ、前へ”進むしかない。
国や政府や行政を頼りになんかしてはいけない。
自分のことは自分でしっかりと決め、これから先も生き続けなければならない。
そんなうめきにも似た悲痛な声が、スクリーンの後ろから聞こえてくるような気がしました。
私たちに今必要なのは、ひとりひとり自分に出来ることを“する”ことだと思います。
出来ることは、やらねばならないこと…
だから、やらねばならないことを“する”のです。
それが、唯一の希望だとアンクルは思います。
夕方からの1回上映のみになっていましたが、これは今、見ておかねばならない映画だと思い、何とか都合をつけて駆けつけました。
監督は、『愛のむきだし』『ヒミズ』の鬼才、園子温。
庭先に警戒区域が設定されてしまった、隣り合わせのふた組の家族。
その姿を通して、大地震と大津波に見舞われ、それによる原発事故に翻弄され、放射能という見えない恐怖に分断されて、変化していく人々のその後が、鋭く描き出されます。
東日本大震災後の20XX年、新たに大震災に見舞われた架空の長島県という設定になっていますが、福島そのもののリアルな描写が続きます。
監督は被災地に入り込んで、現地の人々の話を丹念に聞き、その都度シナリオを書き換え、その生々しい声をセリフに反映させたといいます。
ある日突然、それまでの生活環境もそのありようもすべて奪われ、変えられてしまった人々…
電力会社や政府やマスコミや社会などを非難するセリフは、たくさん出てきます。
腹立たしく、悲しく、怒りに満ちたエピソードも数多く語られます。
しかしそうであっても、どこかを、また何かを批判したり、激しく非難したり、告発したりするような姿勢は、あまり感じさせません。
すべては淡々と、まるで風が吹き過ぎるかのようにスクリーンを流れていきます。
そこにあるのは、怒りや慟哭などではなく、冷めきったあきらめと深く静かな悲しみだけ…
まるでドキュメンタリーを見るかのようなのに、何かが違うのは、ここには“感情”が渦巻いているからです。
タイトルに反して、この映画から浮かび上がってくるのは、救いようのない<絶望>です。
『復興』、『がんばろう日本』、『絆』…
そんなコトバがなんと空しく響くことか…
そのむなしさだけが宙を舞っているようです。
ずっと、そんなことに気付かず、いや気付かないように仕組まれて、ここまで来たけれど、この国はこんな国だったんだ。
そして、こんなことになってもまだ、ちょっとやそっとでは変われない、変えることもできない、そして変わろうともしない、どうしようもない国なんだ。
この国には、もう何ひとつ望めない、希望なんてない国なんだ…
しかし、それでも、ここで、生き続けなければならない…
ここに住む以上、自らを鼓舞してでも、“一歩一歩”“前へ、前へ”進むしかない。
国や政府や行政を頼りになんかしてはいけない。
自分のことは自分でしっかりと決め、これから先も生き続けなければならない。
そんなうめきにも似た悲痛な声が、スクリーンの後ろから聞こえてくるような気がしました。
私たちに今必要なのは、ひとりひとり自分に出来ることを“する”ことだと思います。
出来ることは、やらねばならないこと…
だから、やらねばならないことを“する”のです。
それが、唯一の希望だとアンクルは思います。
by anculu
| 2012-11-11 08:07
| シネマハウス
|
Comments(4)
敗戦後60余年、戦争のない長い期間を過ごしてきた日本。
一時は、”ジャパン アズ No.1”などとおだてられながら、気がついたら
この閉塞した社会。何がいけなかったのか、どうすればよかったのか、
どうあるべきなのか。よく見えてはいませんが、今のままではやはり
おかしいし、声高に煽る政治家や、黙って画策する官僚に誘導される
というのは、なおさら排すべきでしょう。
酔仙の地元でも、統廃合された小学校跡地の利用をめぐって
政治派閥的な利益誘導と、地元住民を置き去りにした処分が
市行政側の巧妙な誘導で着々と進められていますが、目下は
打つ手もなく目視しています。せめて、”見るべきほどのことは”
見届けて、記録しておこうと思っています。
この国の上から下まで、多分、根っこは同じなんでしょう。
我々が、扇動者ではなく、冷静な指導者を選択する能力を持っているか
否かが、これからの分かれ目になるでしょう。
一時は、”ジャパン アズ No.1”などとおだてられながら、気がついたら
この閉塞した社会。何がいけなかったのか、どうすればよかったのか、
どうあるべきなのか。よく見えてはいませんが、今のままではやはり
おかしいし、声高に煽る政治家や、黙って画策する官僚に誘導される
というのは、なおさら排すべきでしょう。
酔仙の地元でも、統廃合された小学校跡地の利用をめぐって
政治派閥的な利益誘導と、地元住民を置き去りにした処分が
市行政側の巧妙な誘導で着々と進められていますが、目下は
打つ手もなく目視しています。せめて、”見るべきほどのことは”
見届けて、記録しておこうと思っています。
この国の上から下まで、多分、根っこは同じなんでしょう。
我々が、扇動者ではなく、冷静な指導者を選択する能力を持っているか
否かが、これからの分かれ目になるでしょう。
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anculu at 2012-11-12 21:49
酔仙さん
3.11をターニングポイントに、この国は右へ、右へと後ろ向きに進み始めているように見えます
ただ、かつてナショナリズムが国を幸せにしたことなんて、一度たりとてなかった
だから、もしそうなるのなら、この国には本当に未来も希望もないし、期待なんて出来ないと思います
それゆえ、何があっても、ひとりひとりがエネルギーと食料は自前で確保できるような態勢づくりを、今から考えておかないと相当マズいと、アンクルは真剣に心配しています
3.11をターニングポイントに、この国は右へ、右へと後ろ向きに進み始めているように見えます
ただ、かつてナショナリズムが国を幸せにしたことなんて、一度たりとてなかった
だから、もしそうなるのなら、この国には本当に未来も希望もないし、期待なんて出来ないと思います
それゆえ、何があっても、ひとりひとりがエネルギーと食料は自前で確保できるような態勢づくりを、今から考えておかないと相当マズいと、アンクルは真剣に心配しています
はじめまして。
園子温監督ということで、生半可なキレイごとでは済まない映画だと思っておりました。どうしても目をそらしたくなることで、できれば知らずにノホホンと暮らしていたいという「逃げ」の気持ちがある一方で、向き合わなければならないことだという気持ちもあります。
まだ観ていませんが、必ず観るつもりです!
アンクルさん、いつもブログを楽しく拝見しています。
美味しそうな食事や楽しそうな光景で、こちらも幸せな気分をおすそ分けして頂いています!これからも楽しみにしています~。
園子温監督ということで、生半可なキレイごとでは済まない映画だと思っておりました。どうしても目をそらしたくなることで、できれば知らずにノホホンと暮らしていたいという「逃げ」の気持ちがある一方で、向き合わなければならないことだという気持ちもあります。
まだ観ていませんが、必ず観るつもりです!
アンクルさん、いつもブログを楽しく拝見しています。
美味しそうな食事や楽しそうな光景で、こちらも幸せな気分をおすそ分けして頂いています!これからも楽しみにしています~。
Commented
by
anculu at 2012-11-13 13:10