2013年 10月 23日
そして父になる ~ 親とは? |
『誰も知らない』の是枝裕和監督、最新作。
息子が出生時に病院で取り違えられた別の子どもだったことを知らされた父親の苦悩と葛藤を描いたドラマです。
2013年第66回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、審査員賞を受賞しました。
主人公の良多は申し分のない学歴や仕事、良き家庭すべてを、自分の努力だけで勝ち取ったと自負し、他人にも自分と同じであることを要求する、いわば傲岸不遜なエリートサラリーマン。
自分の思うような競争心の強い子に育っていないと不満を抱いていた息子が実子でないと知ったときも、「やっぱり!」とつぶやいてしまう。
自らは愛情にあふれた父親だと思ってはいますが、そのくせ息子にも実子にも、そして相手方の親である斎木夫妻にもどこか蔑みの目を向けています。
そんな夫の言動に傷つく妻のみどり・・・
一方、高飛車な良多に「負けたことのない人にはわからへんねんやろなぁ!・・・」と言い放つ斎木・・・
ずるくて抜け目なく、粗野でそのくせ優柔不断なダメおやじなんだけれど、どこか憎めない人間臭い温かみを感じさせます。
そして、ふたつの家庭を行き来させられ、とまどう子どもたち。
それぞれの葛藤がきめ細かく描き込まれていきます。
特に子どもたちのふるまいがとても自然で、演技を感じさせないリアリティが素晴らしい。
あくまで自分と同じであることにこだわる良多に対し、斎木は子どもと過ごす時間の多さと濃さを大切にします。
そんな斎木の良き父親ぶりに触れ、親とは何か?家族とは何か?そしてそれを含む自分の人生とはいったいどうあるべきなのか?と自問自答し、エリートを自負する自分の至らなさに少しずつ気づいていく良多。
その成長していく過程を、実は彼にも母を失った苦い子ども時代があったことをほのめかしつつ、じんわりと巧みに訴えかけてきます。
貧しく弱い人たちをどこか見下して、自分たちこそが人生の勝ち組だと奢りたかぶる主人公のような連中は、アンクルがもっとも嫌いとするタイプです。
そう苦々しく見ていましたが、ドラマが進むにつれ、たとえどんなに嫌な人間に見えても、人にはその人なりの事情があるのだとあらためて気づかされ、とても反省させられました。
何だか自分もチョコッとだけ成長させられたような気分です。
リアルな語り口で人々の誠実な生き方を明らかにしていく、相変わらずの是枝ワールド・・・
それぞれの葛藤の果てに、家族を超えた新しいつながりの芽を予感させるラストシーンが心に残ります。
親になるということは、おのれの我を捨て、人と寄り添う術を得ることです。
それはすなわち、まっとうな人間になるということです。
アンクルは、さまざまな事情や条件が重なり、子どもを授かることがありませんでした。
親になる機会を手にすることが出来なかったのです。
それはつまり、自分はついにまっとうな人間にはなり得ないということ・・・
このドラマを見ながら、なぜかそのことを想い、涙が溢れたのでした。
息子が出生時に病院で取り違えられた別の子どもだったことを知らされた父親の苦悩と葛藤を描いたドラマです。
2013年第66回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、審査員賞を受賞しました。
主人公の良多は申し分のない学歴や仕事、良き家庭すべてを、自分の努力だけで勝ち取ったと自負し、他人にも自分と同じであることを要求する、いわば傲岸不遜なエリートサラリーマン。
自分の思うような競争心の強い子に育っていないと不満を抱いていた息子が実子でないと知ったときも、「やっぱり!」とつぶやいてしまう。
自らは愛情にあふれた父親だと思ってはいますが、そのくせ息子にも実子にも、そして相手方の親である斎木夫妻にもどこか蔑みの目を向けています。
そんな夫の言動に傷つく妻のみどり・・・
一方、高飛車な良多に「負けたことのない人にはわからへんねんやろなぁ!・・・」と言い放つ斎木・・・
ずるくて抜け目なく、粗野でそのくせ優柔不断なダメおやじなんだけれど、どこか憎めない人間臭い温かみを感じさせます。
そして、ふたつの家庭を行き来させられ、とまどう子どもたち。
それぞれの葛藤がきめ細かく描き込まれていきます。
特に子どもたちのふるまいがとても自然で、演技を感じさせないリアリティが素晴らしい。
あくまで自分と同じであることにこだわる良多に対し、斎木は子どもと過ごす時間の多さと濃さを大切にします。
そんな斎木の良き父親ぶりに触れ、親とは何か?家族とは何か?そしてそれを含む自分の人生とはいったいどうあるべきなのか?と自問自答し、エリートを自負する自分の至らなさに少しずつ気づいていく良多。
その成長していく過程を、実は彼にも母を失った苦い子ども時代があったことをほのめかしつつ、じんわりと巧みに訴えかけてきます。
貧しく弱い人たちをどこか見下して、自分たちこそが人生の勝ち組だと奢りたかぶる主人公のような連中は、アンクルがもっとも嫌いとするタイプです。
そう苦々しく見ていましたが、ドラマが進むにつれ、たとえどんなに嫌な人間に見えても、人にはその人なりの事情があるのだとあらためて気づかされ、とても反省させられました。
何だか自分もチョコッとだけ成長させられたような気分です。
リアルな語り口で人々の誠実な生き方を明らかにしていく、相変わらずの是枝ワールド・・・
それぞれの葛藤の果てに、家族を超えた新しいつながりの芽を予感させるラストシーンが心に残ります。
親になるということは、おのれの我を捨て、人と寄り添う術を得ることです。
それはすなわち、まっとうな人間になるということです。
アンクルは、さまざまな事情や条件が重なり、子どもを授かることがありませんでした。
親になる機会を手にすることが出来なかったのです。
それはつまり、自分はついにまっとうな人間にはなり得ないということ・・・
このドラマを見ながら、なぜかそのことを想い、涙が溢れたのでした。
by anculu
| 2013-10-23 23:47
| シネマハウス
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